
奏者紹介・フルート奏者 村上聖さん
前回までの連載では、ウクレレベースの魅力や演奏方法をざっくりとお伝えしてきました。
その中で「二人以上で練習する」ということにも触れましたが、今回は奏者さんをお迎えして実際にセッションをするという、新しい挑戦をしていこうと思います。インタビューも交えながら、ウクレレベースの楽しみ方やセッションの楽しみ方などにも少し触れているので、みなさんの練習のヒントになれば嬉しいです。
今回ご協力いただくのは、フルート奏者として東京と秋田を中心に活動されている村上聖さんです。

12歳からフルートを学ぶ。山形大学地位教育学部音楽芸術コースに進学し、首席で卒業。国立音楽大学大学院修士課程修了。
第20回浜松国際管楽器アカデミーにて、ジェフリー・ケナー氏のマスタークラスを受講し、研鑽を積む。ウィーン国際マスタークラスにてバーバラ=ギズラ・バーゼ氏のマスタークラスを受講し、ディプロマを取得。
現在は東京、秋田を中心に演奏活動、吹奏楽指導などを行う。
セッションの前に…
『ウッドベースに音が近い』というウクレレベースの第一印象から、『実際にウッドベースが使われるようなセッションでは、ウクレレベースでどこまで実現(再現)可能なのか』を確かめていこうと思います。よって今回のセッションはジャズの曲を中心にした「ジャズセッション」に限定して演奏していきます。
始める前の予想としては「自然な『ウッドベースとフルートデュオ』に近い印象になりそう」というのが私たちの考え。
ただもう少し細かく考えてみると、ウクレレベースの音はウッドベースに似てはいますが、もう少し柔らかい印象があります。そのため音色に軽さが出て、デュオ等の少人数、またはカジュアルなセッションで活躍しそうな気もします。実際にそうであれば、気軽に演奏ができるウクレレのスタイルにもマッチするので、より良い結果が期待できるのでは、と考えました。
いざセッションへ
それでは実際にセッションの様子をご覧ください。
『Autumn Leaves〜枯葉〜』
『いつか王子様が』
セッションを終えて
いかがでしょうか。弾いている側としては、とてもよく馴染んでいたような感覚がありました。
今回のセッションについて、聖さんにインタビューしながら二人で考察してみました。
表情がフェミニンな楽器
–––– 今回セッションしてみていかがでしたか?
「ベース」って聞いていたので「音が混ざりづらいかな?」と思っていましたが、思っていたよりも混ざりやすかったです。元々の音があれだけ柔らかければ、エフェクトで音を硬くして、ロックやポップスにも使えるような気がしました。音色のキャパが広いから、案外どんな曲でも合いそうな気がしましたね。
–––– 今回、自然な『ウッドベースとフルートデュオ』に近い印象になりそうという予想を立ててセッションに臨みましたが、ウクレレベースの音とウッドベースの音の違いをどのように感じましたか?
音はとてもよく似ていると思います!ただウクレレベースは楽器自体が小さいので、倍音の響きが明るくて表情がフェミニンな感じがします。音色が明るいから、軽めのボサノヴァとかも合うような気がしますね。
–––– クラシックなどの楽曲にもウクレレベースは使えそうですか?
クラシックに関しては、フルートとの音の相性は良かったです。あとはどのくらい細かい動きができるのか次第で変わってくるのかなと。チェロくらいの動きの細かさがあればだいたいの曲で使えるような気がします。
他の楽器の奏者から見たウクレレベース
–––– 他にはどんなことができそうだと思いましたか?
電気を通している分サスティーン(音の余韻)が稼げるので、ポップスなどの歌が入ってるものは嬉しいかも。
–––– 音が伸ばせるから間が持つ、ということでしょうか?
そうです!ウッドベースの余韻は短くて、間を持たせるために打楽器や歌に絡んでくる楽器を入れることがあるので。そういう意味では「ウクレレベースと歌」「ウクレレベースと楽器」といった二つの楽器デュオでも十分に成り立つと思います。歌はポップスもシャンソンも色々できると思います。
–––– シャンソンですか!?
はい。フランスの歌謡曲で、多分一般的なイメージとは少し違うと思います。とてもおしゃれで繊細。ウクレレベースはエレキベースよりも柔らかい音だから、世界観もよく合うと思います。
あと尺八とか。トラディショナルな楽器とモダンなウクレレベースの取り合わせは、意外性があって面白いと思います。
–––– ウクレレベースは、ウッドベースとエレキベース、双方のいいとこ取りをしている楽器ですね。
それぞれの楽器の良さは確かにありますが、そんな気はします。
ウクレレベースは、どこかのジャズバーでというよりは、バルで飲んでて「よしやろうぜ」というくらいのカジュアルな場面に合っていますし、ウッドベースにも似ているからジャズもできますよ、という感じがします。
–––– 器用な楽器ですよね。
そうですね。オールラウンドな選手だと思います。

–––– 最後に、今回の企画についてひとことお願いします。
今回の連載を通して、今後ウクレレベースがさまざまな層に広がっていくのがすごく楽しみです。
ジャズも基本的には歌伝えや口伝えで伝承されていったものを、ウクレレベースのような小さい楽器を庶民が持ち寄って娯楽として演奏していたもの。せっかく「カジュアルで手に取りやすいもの」というイメージがあるウクレレベースですから、楽しく演奏するのがいちばんです。真面目に「コードからやらなきゃ…」じゃなく、気軽に手にとって「これかっこいいんじゃない?」「いいんじゃない?」といったフィーリングで音楽を楽しんでいくのがいい方向だと思います。
まとめ
いかがでしたか?ジャズ楽曲に限定してのセッションでしたが、実際にセッションをしてみるとジャズの楽曲もウクレレベースで十分実現(再現)可能だということがわかりましたね。楽器の相性も相まってとても音色が馴染んだ良いセッションになりました。
ウクレレベースには、エレキベースにもウッドベースにもない独特な魅力があり、今回のセッションを通じてウクレレベースの可能性がジャズ方面でも少しずつ見えてきました。ジャズやクラシックが好きな人など、さまざまな層に一つの選択肢として広がっていくのがとても楽しみです。
ウクレレを公園に持ち寄ってセッションをするように、ウクレレベースもみんなで持ち寄って気軽に楽しむことができる楽器。そんな気軽さ、手軽さもこの楽器の魅力の一つでもあります。
ぜひ皆さんにも、セッションから広がっていく音楽の世界を存分に楽しんでほしいと思います。
次回はパラグアイの民族楽器「アルパ」とのセッションをしていこうと思います。お楽しみに!

yuki

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