「柚ちゃん、返事遅くなってほんとごめん。ウクレレばっかり弾いてたらゼミの課題が締切間際になっちゃって、かなりピンチでした・・・。」
隼人くんからは、メッセージとともに謝っているキャラクターのスタンプが3つも送られてきた。
隼人くんに嫌われたわけじゃなくてよかったなって思ったら、なんだか安心したのと同時に胸がきゅっと締め付けられたような感じがした。
「柚ちゃんもウクレレやるー?俺教えるよ!あ、でも課題とかテストがないときね(笑)」
そこからはいつも通りの隼人くんだった。
わたしは、隼人くんとやりとりをしながら、やっぱり隼人くんのことが好きだなって思った。隼人くんが私のことをどう思っているかはまだわからないけど、でももしかしたらって淡い期待もしていた。
「柚ちゃん、クリスマスイブって空いている?」
「うん。空いているよ。」
「サークルの友達の家でクリスマスパーティーやるんだけど、良かったら柚ちゃんも来ない?他にもウクレレやってる子が来て、みんなでクリスマス・ソングとか弾く予定!」
「私ウクレレ弾けないけど、行ってもいいの?」
「うん。おいでよ。俺がまたコードおさえるから、柚ちゃんも弾けるよ(笑)」

隼人くんに誘われて参加したクリスマスパーティーは、アットホームな雰囲気でとっても楽しかった。
チキンやケーキを食べながら隼人くんとお友達がウクレレを弾いてくれて、みんなでAll I Want for Christmas is You を歌ったりもした。
途中で隼人くんが「一緒に弾こう」って言ってくれたので、私はまた右手でウクレレを鳴らせばよいのかなって思っていたら、隼人くんはなぜかちゃんと教えるモードだった。
そして、私の後ろからハグをするような体制でウクレレを持って、コードをいくつか教えてくれた。
真面目に教えてくれているのに、私はドキドキしすぎて顔が赤くなり、さっき飲んだシャンパンのせいにしてごまかした。
楽しい時間はあっという間に終わってしまった。
駅に向かって歩いていくみんなの後ろを、隼人くんと私はくだらない話をしながら歩いた。
「パーティー楽しかった!私もウクレレ欲しくなっちゃった。」
「お、じゃあ今夜サンタさんにお願いしちゃう?(笑)」
「そうしようかな(笑)今からでも来てくれるかな〜」
「柚ちゃんいい子だからきっと来てくれるよ〜(笑)」
手をつないだライブの日よりもさらに寒かったけど、今度は手をつなぐことはなく、二人の間にはちょっとだけ距離があった。
「ね、柚ちゃん。」
「うん?」
「駅の反対側の広場でね、1時間ごとにイルミネーションのショーがあるらしいんだけど、一緒に見に行かない?」
「え、ショー?もうすぐ22時だけど、まだやってるかな?」
「うん。クリスマスイブだから遅くまでやってると思うよ。」
「いいね。見に行きたいな。」
私たちはみんなが降りていった地下鉄の入り口を通り過ぎて、駅の反対側にある広場に向かった。
夜遅い時間にも関わらず、広場はショーを見に来たたくさんの人であふれかえっていた。
その人ごみにまぎれて、私たちはどちらからともなく手をつないだ。
あと1分で始まるという時、隼人くんが私の耳元で「柚ちゃん。ばれてると思うけど、好きです。付き合ってください。」と言ってくれた。
私は、隼人くんの方を見て「はい。」とお返事した。
その瞬間、あたりのライトがふっと消えて、オルゴールのクリスマス・ソングが流れてきた。
そのときの音色は、なんだかとってもキラキラしていて、忘れられない音になった。

(おわり)
レレ美
日常生活のキュンっとする瞬間を切り取ったストーリーを描く。
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