【連載】ウクレレ恋愛小説「あのときの音色」第四話

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ポケットの中でつないだ右手は、暖かいを通り越して熱いくらいだった。

汗をかいてないか心配になったのと、駅に近づいて人が増えるにつれて恥ずかしくなってきてしまったのとで、そっと手を離して隼人くんのポケットから出した。

駅の周りはイルミネーションがはじまっていて、楽しそうなクリスマスソングが流れていた。

隼人くんとは別々の電車だったので、改札の前で別れた。私が改札に入る時に隼人くんも自分が乗る電車の方に向かって歩き出したはずだったけど、ちらっと振り返ったら隼人くんもこっちを見ていた。

私は、さっきまでつないでいた右手で隼人くんに向かって小さく手を振った。

 

終電前で混んでいる電車の中でつり革につかまって立っている間、今日会ったことが何度も頭の中で繰り返された。

ライブでドキドキしたこと、いつもと違う隼人くんの横顔を見たこと、帰り道で手をつないだこと・・・。

何度思い出しても、まるで夢を見ている気分で、イヤホンから流れてくるウクレレソングには全く集中できなかった。

家に帰ってスマホを見たら、隼人くんからメッセージが届いていた。

「今日は一緒に来てくれてありがとう。無事に家に着いたら教えてね。」

私はすっかり冷たくなってうまく動かない手で、慌てて返信した。

「家に着いたよ。今日ライブ楽しかったー!誘ってくれてありがとう。」

「楽しんでもらえてよかった。帰り道、急に手をつないでごめんね。」

「ううん、大丈夫だよ。」

やりとりの途中で、私はお風呂に入った。

今日会ったことがまた頭の中で繰り返し流れて、気がついたらシャンプーを2回もしていた。

湯船の中でも、鍋パーティーで隼人くんと出会った日のことや、大学のラウンジで一緒にウクレレを弾いたことを思い出してしまって、お母さんから「柚、いつまでお風呂入ってるのー!」って声がかかるまで、私はずっと隼人くんのことを考えていた。

お風呂から出てすぐスマホを見たけど、隼人くんからの返信はなかった。

それから寝る直前までもスマホが気になって何度か見たけど、隼人くんはもう寝ちゃったのか返信はなかった。

次の日の朝起きたときも、そして授業が終わってバイトに行く時も、何度もスマホを見たけど、隼人くんからの返信はなかった。


ライブに行ってから4日後。

隼人くんからは結局そのまま返信がなくて、大したことじゃないのかもしれないけど、私は気になってしまっていた。

手をつないだことを「ごめんね」って言ったのは、どういう意味だったんだろう。何か私からメッセージを送ったほうがいいのかな。でも迷惑って思われても嫌だし、どうしたらいいのかな。

考えても考えても答えが出なくて、インターネットで「男の子 手をつなぐ 心理」って検索してみたけど、「相手のことが好きだから」って答えもあれば「特に意味がない」って答えも、付き合う前は「遊び人だから」っていう答えもあって、余計に頭の中がぐるぐるしてしまった。

気がついたら隼人くんのことを考えていて、SNSで無意識に検索したら、ウクレレを持った女の子と一緒の写真が出てきた。サークルの集まりかもしれないけど、「遊び人」なのかなってますます不安になった。

どうしたらいいのか分からなくて、いてもたってもいられなくなって、次の日の授業後に杏奈と芽衣ちゃんとご飯を食べてる時に相談することにした。

「あのね、聞いてほしいことがあるの。」

「うん。どうしたの?」

「あのね、ウクレレ男子って、遊び人だと思う?」

「え。急にどうしたの?(笑)あ!もしかして隼人君と何かあった?」

「うん・・・。」

私は杏奈と芽衣ちゃんに、鍋パーティーの日のことから、ライブ後に手をつないだときのことまで、全部話した。

2人は「わ!隼人君、ウクレレ隠し持ってたとか、なにそれ(笑)」とか、「いいなー!私もポケットの中で手をつなぎたい!」とか反応しながら、私の話に付き合ってくれた。

そしてどうしたらいいのか一緒に考えてくれた。

「手をつなぐとか積極的だよね。」

「ほんとに!でも私が鍋パで会った時には、そんなにチャラいようには思えなかったな。」

「うん。慶からもそんな話聞いたことないな。普通に柚のこと好きなんじゃないの?!」

「え、でも、でもね。手つないでごめんねって言われたの。それで返信がないんだよ。」

「うーん、そっか・・・。」

「なんでかよくわかんないけどさ、柚からそれとなくまた連絡してみたら?」

「そうだよね。『わたしもウクレレ弾けるようになりたいな。』とかって言ってみたらどうかな」

「え、え。そんなの急に送っても平気かな?!」

「大丈夫でしょー。心配ならさ、一緒にいる間に送っちゃおうよ」

私は2人にもらったアドバイスの通りに隼人くんにメッセージを送った。

 

そしたらその日の夜、隼人くんから返信があった。

(続く)

第4話おまけ – 「ウクレレ男子」と手つなぎデート

ウクレレ男子は、デートに気兼ねなくウクレレを持っていくことができる。なぜなら、ウクレレを持っていても女の子と手をつなぐことができるからである。
ウクレレは比較的軽くて小さいため、片手にウクレレを持ちながら、反対の手で手をつなぐことができる。さらに、背負ってしまうタイプのケースであれば、両手が空く。デート中に買い物をして、買った荷物を片手に持ったとしても、もう片方の手で手をつなぐことができるのである。
(そして隼人くんと柚が手をつなぐシーンにドキドキしてくださった皆さま、本連載は次回が最終回です…!)

※ この小説はフィクションです

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レレ美

都内在住のウクレレ女子。
日常生活のキュンっとする瞬間を切り取ったストーリーを描く。

ウクレレを広めるために記事拡散!

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