【ミレニアル世代のウクレレ論 Vol.1】受け皿としてのウクレレコミュニティ:ICUウクレレサークル創設者 あもん氏

バブルが弾けた後の「失われた20年」の間に育ち、2000年代以降に成人をする年齢層。彼らは「ミレニアル世代」と呼ばれる。物心ついた時からデジタル機器に囲まれ、インターネットで世界と繋がり、急速なグローバル化により多様な価値観を目の当たりにして育った。

本連載「ミレニアル世代のウクレレ論」では、ウクレレを弾くミレニアル世代がどのように楽器と出会い、向き合い、音楽を楽しんでいるのか、インタビュー形式で彼らの価値観を探っていく。

連載第1回目は、国際基督教大学でウクレレサークルを創設したあもんさんに単独取材を行った。自由を求めつつ、社会や仲間との繋がりを重んじる傾向の強いミレニアル世代の価値観を、あもんさんのウクレレ論を通じて垣間見ることができれば幸いだ。

Ukulele Music Society:通称UMS(うむす)

ーウクレレを始めたきっかけなどを含め、まずは自己紹介をお願いいたします!

はじめまして、国際基督教大学(以下ICU) 2年生のあもんです。今年の4月にUkulele Music Society(以下UMS)というウクレレサークルを立ち上げました。キャンパスにある綺麗な原っぱにビールケースを並べて、青空形式でやってます(笑)。

ウクレレに関しては、まだ暦が浅くて恥ずかしいのですが、今年の2月から始めました。元々歌を歌うことが好きで、楽器で伴奏することができたらみんなの前で歌えるなあと思ってまして。

で、ある日アルバイトで溜まったお金の使い道を考えながら吉祥寺を歩いていたら偶然ウクレレを見つけて、「これだ!!」と。直感ですぐに買ってしまいました。購入してからは独学でも学びつつ、色んなウクレレプレーヤーや講師に連絡して、直接習いにいったりもしました。

ー即決だったんですね。ウクレレサークル立ち上げの経緯は?

実は、元々サークルという組織を作ろうと思っていたわけではなくて。ただ単純にウクレレを一緒に楽しむ仲間を増やしたくて、大学にあるチャペルの前でウクレレを弾いて歌っていたんです(笑)。そうしたら、徐々に人が集まってきて。気づいたらセッションとかも始まりだしたのでこれはサークルにしてみようかなと考え始めました。

そこで、今年の4月に設立し、6月にはICUの公認団体として登録されました。メンバーは15名前後います。新メンバーは現在も募集中です!

ー都内の大学にウクレレサークルはまだほとんど見ないので、パイオニアですよね。

仲間を増やしたかったという動機が強いです。バラエティーが欲しいとも考えていて、他楽器もセッションに混ぜたり、アンサンブルを行うのが凄く楽しいんです。

UMSのUはUkuleleの”U”でもあると同時に、Universality(普遍性)の”U”であると僕たちは考えてます。そもそも僕は楽器に対して民族性をあまり感じなくて、「この楽器だからこのジャンル」という拘束性は苦手で。。ICUの理念でもあるのですが、リベラルアーツのような、既存のジャンルに縛られない考えをする傾向がありますね。ギターも最初に出てきたときは民族楽器として扱われていましたが、今は違いますよね。ウクレレも徐々にジャンルレスに色んな方が弾くようになると思います。ユニバーサル(普遍的)に楽しめる楽器です。

ーおっしゃる通りです。確かに、今のウクレレシーンは過渡期にありますよね!プレイスタイルが百花繚乱の時代と言いますか。

だからこそ僕たち自身もアンサンブルで色んな楽曲をバラエティー豊かにやりたくて、これからもオープンな形でセッションとかをしていきたいです。

サークル(circle)というのはもともとただの「円」のことだと思ったんです。 UMSでは、「青空サークル」という活動を大切にしていて、校舎の前の原っぱにビールケースをただ丸く並べただけの空間です。 部員じゃない人も、好きなときに入ってきて、好きなときに出ていくことができます。 どこからともなく人が集まり、セッションが始まり、日暮れと共に人がいなくなる。それがぼくの理想とする「サークル」の姿ですね。

UMSが活動拠点とするICUキャンパス内にある原っぱ。ビールケースを円形に並べ、ウクレレを弾くそうだ。

社会の「受け皿」を目指す

ーあもんさんは授業も忙しいなか、精力的に活動されていますよね。単純に仲間が欲しいだけならここまでしないと思うのですが、何か特別な想いなどがあるのでしょうか。

最初は、キャンパスに原っぱがあるからそこで弾ける楽器で手軽なものを選んだだけでしたが、ウクレレを皆で集まって弾いているうちに徐々に見えてきたものがあります。

それは、ウクレレの強みを活かして、学内の「受け皿」的な場所が作れるということです。僕自身、高校時代に教室で居づらさを感じていたことがありました。ICUは比較的自由な校風ですが、それでも学内で孤独を感じていたり、寂しい想いをしている人は一定数いるはずです。そういう人たちの居場所を作りたい。社会と繋がりたい人たちの手助けをしたい。そのためのツールとして、ウクレレがピッタリだと思います。

大学にもよると思いますが、音楽サークルってどこも練習スケジュールがガチガチなところが多くて、毎日練習しないと着いていけなくなってしまいます。せっかく音楽が好きで入部したのに、拘束性が原因で辞めてしまう方がいるのは勿体無いなと。。自分はそういう方を「練習していないからしょうがない」と切り捨てるのではなく、仲間として受け入れる側でありたいと考えてます。

ウクレレは未経験者に優しい楽器ですし、1〜2時間もあれば簡単な曲やコードは弾けるようになれます。良い意味で緩く、縛られずに楽しめる楽器です。ふらっと集まって、みんなで気軽に楽しむ。小さくて軽いウクレレだからできることでもあります。

インタビュー中に当メディア代表のSHINも駆けつける。「UMSさんのように、ウクレレの新しいコミュニティを作っていく若手達とシーンを盛り上げたい」と語る。(左:あもんさん、右:SHIN)

サークルには属さず、ずっと1人で楽器を弾いてた子が、UMSのセッションにきてくれたことがありまして。そしたらその方が凄く楽しそうにしてくれたんですよ。ウクレレがきっかけで、社会との繋がりや自分の居場所を見つけられる方が一人でも増えたらいいなと、そう願います。
そういう「受け皿」的な役割をUMSでは担っていきたいです。キャッチャーインザライ(ライ麦畑でつかまえて)的な発想ですね。(笑)

僕にはね、広いライ麦の畑やなんかがあってさ、そこで小さな子供たちが、みんなでなんかのゲームをしているとこが目に見えるんだよ。何千っていう子供たちがいるんだ。そしてあたりには誰もいない――誰もって大人はだよ――僕のほかにはね。で、僕はあぶない崖のふちに立ってるんだ。僕のやる仕事はね、誰でも崖から転がり落ちそうになったら、その子をつかまえることなんだ――つまり、子供たちは走ってるときにどこを通ってるかなんて見やしないだろう。そんなときに僕は、どっかから、さっととび出して行って、その子をつかまえてやらなきゃならないんだ。一日じゅう、それだけをやればいいんだな。

J.D.サリンジャー著「ライ麦畑で捕まえて」:登場人物のホールデン・コーフィールドの発言より引用

誰かの居場所を作るためのウクレレ

ーとても興味深いです。確かに、ウクレレなら気軽に社会と繋がるためのツールになり得そうですね。今後のUMSはどういった活動をされていくんでしょうか?

まずは、今年4月に結成したばかりなので、運営体制を少しずつ整えていきたいと思います。とは言うものの、拘束性が強いコミュニティでは生きづらさを感じてしまうので、限りなく部員と部員以外の垣根を無くしながら自由にかつ気軽に音楽を楽しめる場を作りたいです。

もうすぐ9月期の新入生が入ってくるので、またみんなでウエルカムな状態を作りあげたいですね。初心者~上級者問わず、気軽にぱっと参加できる場所が理想です!未経験者から楽器を始めるのって難しいですが、ウクレレは比較的はじめやすい。青空形式で、初心者を歓迎する雰囲気も押し出したいです。冬場をどうするかは少し問題ですが、これから対策を考えます。(苦笑)

具体的な活動として何をやっていきたいかはまだはっきりしていないところはありますが、学外だけでなく、より社会の「受け皿」的な役割をサークルとして作れるようにしたいです。

例えば、老人ホームや病院など、社会との繋がりが希薄化しがちな場所でウクレレを弾いたり教えたりしていきたいです。ウクレレという楽器を通じて多くの方たちと繋がって、色んなコミュニティに音楽を届けることができれば嬉しいです。学内でも学外でも、社会の受け皿として機能するコミュニティを作りあげていくことが理想です。辛かったり、寂しかったり、そういう想いをしている方に居場所を提供するためにも、これからもウクレレを広めてコミュニティを作っていきたいです。

ICU 国際基督教大学
Ukulele Music Society 通称UMS(うむす)
お問い合わせ: icu.ums@gmail.com
twitter: https://twitter.com/icu_ums

 

取材後記

SNSなどを通じた体験の共有が当たり前のミレニアル世代は、何よりも他者との「共感」を大切にする。他の世代と比較して、社会や仲間同士の繋がりを大切にする傾向が強い。

「失われた20年」の間に育ち、経済格差の広がりや大震災を目の当たりにしてきた彼らは、辛い想いをしている人を置いてまで自分が成功することよりも、どうにかして救う方向に意識が回るのであろう。「ウクレレを通じて社会の受け皿を作る」というあもんさんの優しくも力強いビジョンは、ミレニアル世代らしい価値観と言える。

優しさが滲みでるあもんさんの人柄に取材陣一同が惹き付けられたように、多くの方が彼と彼のウクレレと繋がり、居場所となるウクレレコミュニティを共に形成していくことであろう。当メディアとしても、サポートできることは積極的に行っていきたい。UMSの益々の活躍と発展を心より願うばかりだ。

インタビュー後にUkulele Liberty代表SHINとセッションをする様子。

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Ukulele Liberty 編集部

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